シガレット(機械巻き紙タバコ)の歴史を書くという賢さ

Brandt, Allan M. The Cigarette Century : The Rise, Fall, and Deadly Persistence of the Product That Defined America. Basic Books, 2007.
 
タバコの問題の中で、シガレット(機械巻き紙巻きタバコ)の歴史を描く素晴らしい書物。シガレットに集中したことで、問題をアメリカの産業化と近代化に絞りこむことができて鮮明な記述になっている。タバコはアメリカ大陸の先住民の宗教的な儀式の中のアイテムで、それ以外にも世界各地の文化で色々な形をとっているが、それらの問題をある意味で回避して、現代社会においてさまざまな側面で圧倒的な重要性を持つシガレットの歴史に集中した。多くの学術賞に輝き、ピュリッツァー賞の候補にもなった。
 
シガレットを生産する仕組みの話は、ちょっとした前史があって、1881年の、James Bensack による機械巻きシガレット製造機械から始まる。毎分200本のシガレットを機会でつくることができる。それまでは、紙巻きタバコはもちろん存在したが、マイナーなものだったとのこと。葉巻とかパイプなどが優勢だったということだろう。
 
オペラ『カルメン』は1860年代に作曲されていて、タイトルロールはタバコ工場で働く女工だが、彼女は紙巻きタバコを手で巻く女工だったのだろうか。タバコの中で光が当たらない部分の産業でなくて、もっと花形の部門かなという思い込みがあったが、どうなのだろうか。それとも、別のタバコ関係の仕事をしていたのだろうか。