ドストエフスキイ「現代生活から取った暴露小説」

Dostoyevsky, Fyodor M. "現代生活から取った暴露小説のプラン." In 後期短編集, 181-94. 東京: 福武書店, 1987.
Dostoyevsky, Fyodor M., and 正夫 米川. ドストエフスキイ後期短篇集. 福武文庫. Vol. と0202: 福武書店, 1987.

ドストエフスキイは私が「まだ読んでいない」偉大な作家である。教養人としても、学者としても、なぜこの偉大な作家で精神疾患の問題を深く織り込んだ作品をきちんと読んでいないのか、私が自らを問い詰めたい(笑)

今回は、まったく違う話の流れから読んだ短編作品だけれども、やはり偉大な作家の優れた文学作品であるだけでなく、学術的にも私が知っておかなければならなかった話である。文学作品としては、身の回りにたくさんいるし、なによりも私自身がとてもこの物語の主人公にとても似ている。うううむ。

学術的に一つの重要なことは、ロシアの作家であるゴーゴリが1835年に刊行した『狂人日記』という作品をなぞった構造になっていること。ゴーゴリの作品は、サンクトペテルブルクの下級官僚の不安と精神疾患への転落を描いた作品である。この作品に触発されて、中国の魯迅の『狂人日記』という作品を1918年に書いている。同時代の日本は精神疾患についての小説、詩、映画などの黄金時代に入った。これは、作品が作品に影響を与えるという文学の世界の中での影響関係もあるけれども、精神病院という新しい社会システムに注目すると、面白いのかもしれない。19世紀中葉のロシアもそうだし、20世紀初頭の日本もそうだが、精神病院というのは新しい社会システムで、それがある種の衝撃を持って社会に入っていくことと考えられないだろうか。