日本薬史学会. 薬学史事典. 薬事日報社, 2016.
Taylor, Norman. 世界を変えた薬用植物. 難波恒雄・難波洋子訳. 創元社, 1972.
あと半年くらいで、日本の薬の流通についてそこそこの論文を書かなければならない。イギリスやヨーロッパについてはWallis から良い文献を拾うことができる。日本については二次文献を固めて、なんとか良いマテリアルを確保する。2016年に『薬学史事典』というとても役に立つ本が刊行されたので、そこから基礎的な日本語の本を読むことができる。それから、世界の薬の話で稚拙な部分もあるけれども、面白くてよく読んできたのがテイラーの『世界を変えた薬用植物』である。『世界を変えた薬用植物』は、20年ほど前に、草光俊雄先生から、当時なくなられたお父さまの蔵書としていただいた。お父さまは医学史に興味があったお医者様で、結核にもご興味があったらしい。
テイラーの書物は、もともとは1965年に原著が刊行され、その7年後に翻訳が刊行された。翻訳の背後にいるのは大阪大学の中川米造という重要で偉大な古い医学史家である。彼の推薦で訳しているのが、大阪の薬学部を卒業して富山の薬学の教授となった難波恒雄と、彼の妻の大阪外語大学で英語を学んだ卒業生である難波洋子である。彼らがつけている訳注も素晴らしい。450ページくらいの本だが、そのうち50ページは訳注がしめていて、歴史、文学、薬学、医学などを豊かにカバーしていて、とても便利である。私のメモだと、以下の薬用植物や疾病について、とても面白い記述をしている。<コカイン、レセルピン、ストリキニーネ、麦角、エフェドリン、キツネノテブクロ、アロエ、センナ、ウワバイン、イヌサフラン、ケシ、モルヒネ、大風子、ヤマノイモ、マラリア、心臓、アトロピン、ハンセン病>
この本はアマゾンではとても安く買える。