東京の福祉史について

河畠, 修. 福祉史を歩く: 東京・明治. 日本エディタースクール出版部, 2006.
河畠, 修. 福祉の近代史を歩く: 東京・大正〜昭和. 日本エディタースクール出版部, 2011.
 
四谷の二葉幼稚園、上野の万年尋常小学校、大塚の養育院、本郷・西麻布・広尾の仏教徒の福田会の施設、麻布・六本木の聖ヒルダ、滝野川の東京養老院、四谷の鮫河橋、細民、貧民、窮民、鰥寡孤独、不具廃疾。 
 
 
明治以降から昭和の敗戦にいたるまでの東京の福祉史を描いた書物を二冊みた。福祉の施設に焦点をあてている。設立時の施設に関する記述、当時のイラストや地図上のスポットを特定し、それを現在の写真と地図と重ね合わせて語るというスタイルである。とてもいい視点が多く、私も少し真似してみよう。つまり、王子脳病院の東京の位置づけについて短いセクションを書くときに、このようなざっくりした発想で書いてみよう。
 
ただ、この記述のような地域限定的なアプローチだけだと、私の狙いにはうまく合わない。患者に視点をあてると、かなり広い範囲からの話になる。当時の東京市には30ほどの精神病院があって、これらは競争しているアスペクトもあったから、広いゾーンで考えたほうがいい。また、王子脳病院はかなり実力がある精神病院ので、東大や慶應の精神科との連接もかなりあったので、もう少し広い範囲でとらえたほうがいい。患者でみると、わりと広い範囲を議論しなければならない。つまり、河畠の著書のような地域的に限定された視点と、その限定を超えた大都市の強力な精神病院としての二つの側面を描こう。それから、色々な側面で、ことに患者の側面で、日本全体や植民地や世界と接続していることも描きこむべきだろう。