清水藤太郎. 國醫藥物學研究. 広川書店, 1941.
清水藤太郎という日本の薬学史の巨人がいる。天野 宏 (著), 百瀬 弥寿徳 (著)『まず薬局へおいでなさい―薬学の巨人清水藤太郎』 (2014) はまだ読んでいなかったが、Wikipedia の情報は急所を押さえた的確さを持っており、まだ見ていないけれどもすぐに本を買った。
タイトルの「国医」という言葉は、当時の「紀元ブーム」のようなものの産物であろう。書物は昭和16年の刊行だが、湯本求眞が『皇漢医学』を出版したのは2587年から2588年という紀元を用いて記されている。これは国家への集中を意味しているのだろう。その中で、単語「国医」で、普通は「漢方」「漢方医」という言葉が意味する「江戸期日本における中国医学+アルファ」を意味しようということは、なんとなく分かる。ただ、日本で西洋医学を学んだ医師たちは何と呼ぶつもりなのかなど、私にはよくわからない部分も大きい。
それでも『国医薬物学研究』は非常に面白く分かりやすい書物である。私に必要な漢方薬学の薬の話ができるようになるためには、この200ページ弱の冊子を読んでおくのがいい。和漢薬は無慮一万ほどあるが、実際に使用するものは200-300種、常用のものは100種類を出ないという。古方派はその中でも最も少ないという。後世派は多いが、常用でも200を超えないという。まず100種類をマスターしよう!
基本を書いたのちに、薬を以下の17の機能に分け、そこに薬材や個々の薬品名をリストする。強壮剤や梅毒対策には、マムシや鹿の角の黒焼などが本当に入っていた。
発汗
解熱
鎮咳去痰
利尿
駆水
消炎
健医消化整腸
収斂
鎮静鎮痙鎮痛
緩和
振興
滋養強壮
下剤
駆瘀血(瘀は古いという意味)
排膿排毒
駆虫
雑