宋代中国の薬の国際的通商など

Winterbottom, Anna and Facil Tesfaye. Histories of Medicine and Healing in the Indian Ocean World. Palgrave Macmillan, 2016. Palgrave Series in Indian Ocean World Studies. 2vols.  
 
インド洋世界 Inidian Ocean World という地理概念がある。インド洋を共有する沿岸世界で、数多くの強力な文化圏を持っている。インドという文化圏、そして中世以降はイスラム世界という中東の世界がある。西側では紅海をつたって地中海と北アフリカとつながっている。東側は、インドネシア、ジャワの複雑な陸地と海域を通ると中国の世界がある。インド、イスラム世界、地中海と北アフリカ、中国という、世界の強力な文化が入り組んだゾーンである。このような世界の医学、疾病、そして薬に関する論文を集めた論文集である。薬の論文も面白かったが、他の論文も読んでメモしておいた。
 
薬は11世紀から12世紀に沈没した通商船の積荷の分析である。中国から通商船が各地に行って、薬材を磁器に入れて売っていたが、この通商船が沈没し、それを1990年代に引き上げたというダイナミックな話である。特に面白いのが女性を対象にした薬で、性における興奮と妊娠が強調されている。
 
それ以外の論文も面白かった。19世紀後半のインドでは、イギリス型の精神病院が地元民の世帯の負担を一時的に除去する機能を持っていたという話、1830年代中葉のエジプトにおけるペストの大流行によって、アレクサンドラやカイロの人口の1/3が死亡してアフリカ系の黒人に被害が非常に多かったという話。精神病院の建築に関しては、もちろん松沢病院のような形も重要だが、王子精神病院(「王子脳病院」を改めて)の形は何を意味するのかを考えているし、エジプトなどでのペストの終焉をどう考え直すのかも考えています。
 

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1990年代に通商船を引き揚げた地点

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インド洋世界における宋代中国の通商地点

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媚薬を入れる磁器