Social History of Medicine より精神医療史の論文

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H-Madness が Social History of Medicine の最新号から精神医療の歴史に関する研究を紹介する特集。紹介論文は3点である。最初のものはイギリスの20世紀初頭において、産業疲労 industrial fatigue がどう理解されたかを分析する論文。工場労働者の身体全体を生産的な身体ととらえ、それぞれの個人の水準では、ミクロシステムの小さな世界の中で生産が導き出されるものととらえる視点であるとのこと。

第二のものは、症例誌のアーカイブズの問題で、カナダの事例である。症例誌はさまざまなタイプの患者の活動や言葉を含み、妄想的、非合理的、詩的であるようなものが多い。このような歴史的な物語、記録、手紙などがコレクトされて、個人の人生と個性がまとめられた文書になる。その部分を分析しようという論文である。アレット・ファルジュのようなフランスの理論も含む実証の歴史家も含まれている。ちなみに、日本もだいたいその通りである。

第三の論文は、まだわかりやすい要約に接していないが、1950年代のクロルプロマジンの登場に関する薬の使用に関する症例へのインパクトについて。革命的な薬の登場と利用という言葉に接すると、それだけを使いまくるという、一色に染め上げられるような利用を想像するが、むしろ多様な薬が用いられるような構造になっているという面白い議論。1950年と1960年を較べるという議論だと思う。