売春と男性・女性の「被害」と精神疾患

Enloe, Cynthia.  Does Khaki Become You? (1983)

 

昭和戦前期の精神医療が、警察や社会の影響のもとで機能した側面に、売春の影響という非常に大きな領域がある。実際、症例誌を見ていても、男性が買春から発達させた精神疾患となった客は数割はいるし、売春婦は数は少ないが、確かに存在する。これは公費でも私費でも存在する。特に、この時期はまだ梅毒が精神医療の世界で非常に大きな力を持っていて、男性客の数が多かっただけでなく、女性患者にも梅毒の被害者は多いし、売春婦に患者が多いことも分かる。この部分を取り上げてみよう。

売春と精神医療は、非常に多数の研究書があって、しばらくこれらを読もう。今回は19世紀から20世紀後半の軍事と経済の背景で、植民地や貧困な農村部の問題を論じた書物である。アメリカやイギリスはもちろんのこと、日本や、皮肉なことに韓国も、他国の女性や、自国の貧しい女性が、国家や軍の男性との売春に取り込まれたことを生き生きと論じている。日本では「からゆきさん」やサンダカン8番娼館のような話である。