中国の世界思想(コスモロジー)の発展と衰退についての教科書

Henderson, John B. The Development and Decline of Chinese Cosmology. Columbia University Press, 1984.  Neo-Confucian Studies.
 
よくメカニズムは分からないけれども、中国の医学史や科学史についての学術的な議論を英語にするためには、日本語の本よりも英語の学術書が必要である。その関連で一冊買ってみて、とても役に立つと実感した。
 
私が直接存じ上げている学者の中には、日本語、中国語、英語と3つの言語を自由に使える才人たちがいる。栗山先生や大道寺さんは、この傑出した才人たちの一人である。私は中国語ができないので、中国の状況と比較するときには、色々な小道具が必要となる。その一つが標準的で使うことができる教科書である。
 
もちろん中国に関して独創的な議論を作ることは最初から狙っていない。学術的できちんとした議論が必要である。簡単に言うと、標準的な教科書の書物が必要になってくる。医学史であれば、 Nathan Sivin や Paul Unschuld の著作を使っている。医学以外の中国の科学思想と技術に関しても似たような書物が必要である。ことに古代・中世・初期近代の状況を調べて、それを西欧の科学思想と較べるという視点は、色々な水準で必要である。そこで、Henderson の書物が非常に流れやすい。また、私が参照をする近世の時期は、必ずしも重要で大きな自然哲学者が中国に登場するわけではないという安心感もある。王朝の名前や書物のタイトルの一覧があることも、とても便利である。黄帝内経と The Yellow Emperor はなんとか流れて出てくるが、Huangdi Neijing という単語はなかなか出てこないです(笑)
 
その一方で、このような脈絡で剽窃と言われるものが出てくるのだろうなということも実感する。議論をまとめて、そこに必ず別の学者の教科書的な学術書に基づいていることを書きこむことが必要ですね。