『サロメ』と狂女のような月

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新国立劇場は来年の5月にリヒャルト・シュトラウスサロメ』を上演する。もともとはワイルドが書いたものからドイツ語となったものである。私も何回か観たことがあるが、音楽も演出も退廃と耽美という言葉がぴったりである。サロメを歌うソプラノは、ブルガリア出身のアレックス・ペンダ。彼女の母親もヴァレリー・ポポワというブルガリアを代表したソプラノ。一族にも著名な音楽家たちばかりだとのこと。祖父も著名であるが、女性との関係も派手だったとのこと。ブルガリアのゲーナ・デミトローヴァというソプラノに習ったことがあるとのこと。
 
作品について。ワイルドはもともとはフランス語で書き、それを友人・恋人のアルフレッド・ダグラスが英語にした。こちらは私は読んだこともなかった。私は福田恆存の訳を岩波文庫で読んだことがあり、もちろんドイツ語のオペラは何回か聴いている。何か混沌としていると思い、英語版を50円くらいで買って読んでみた。西脇順三郎を思わせるように、豪華さと死と狂気と性についての耽美主義がよく伝わる英語である。ヘロデ王が月に関していうセリフから。
 
The moon has a strange look to-night.  Has she not a strange look?  She is like a mad woman, a mad woman who is seeking everywhere for lovers.  She is naked, too.  She is quite naked.  The clouds are seeking to clothe her nakedness, but she will not let them.  She shows herself naked in the sky.  She reels through the clouds like a drunken woman...  I am sure she is looking for lovers.  Does she not reel like a drunken woman?  She is like a mad woman, is she not?