医学史で私が苦手な主題はたくさんあるが、その一つが「ウィルス」である。20世紀の後半のことをまだよく知らないからである。その中で、コロナウィルスとミクソウィルスの違いがまだわかっていない。いい画像を持っていて説明されるとわかるが、その仕事をずっとしていない。うううむ。
いまの日本では新型感染症と呼ばれているが、英語では CORVID-19 。これは coronavirus disease 2019 を略して CORVID-19 という。コロナウィルス coronavirus という単語は、1968年に Nature の報告で初めて使われた単語。電子顕微鏡で撮影した写真が、球形(あるいは円形?)から多くの突起が出ていることに特徴があり、この突起が、太陽の周りに観察される「コロナ」に似ているからだという。彼らが「コロナに似ている」という記述のときに、較べられたのは、インフルエンザを起こすミクソウィリス myxovirus である。ミクソウィルスが持つ突起は鋭くとがっていて、このウィルスからの突起は丸くなっていて、コロナに似ているという説明である。私がもっている Viral Infections of Humans なども突起の鋭さと丸さの違いをあげている。
現在のミクソウィルスとコロナウィルスの画像をネット上で較べると、もちろんこの対比を見つけることは可能である。しかし、かなり似ている画像もある。二つのウィルスのグループは突起が違うのだという記述が、成立しそうだけれどもよくわからない。ミクソウィルスの突起の尖端は丸いものがかなり多いし、コロナウィルスは、それだけ見たら、かなり鋭くとがっているものが多い。
ミクソウィルスが発見されたのが1950年代、コロナウィルス coronavirus という単語が初めて使われたのが1968年である。この段階で、ミクソと較べるとコロナに似ているという報告がされたのだろう。 その頃の画像を確認しておくと、きっと、太陽のコロナに似ているというコメントが分かるのだろうと思う。
もうひとつ。「コロナウィルス」は1968年に作られた新ラテン語であるということに初めて気がついた。corona と virus のいずれもラテン語である。1968年につくられた新ラテン語。複数形は普通は coronaviruses だが、そのうち coronaviri でもよくなるかもしれない(笑)