長期収容の病院の問題を考えるとき、患者が死亡して退院するという事例が存在する。王子脳病院のケースでいうと、1926年から1945年までの期間において入退院はトータルで7,500件、うち死亡して退院したのは約1,200人である。この15%という数字はやはり意外に少ないという複雑な議論があるが、1,200人ほどの死亡にはさまざまな深いドラマが展開していることも間違いない。しばらく前に一本の論文を書いて、もっと哲学的な議論が欲しいと思っていたところに本を頂いた。イギリスの学者によくいる、複雑性を深いところでとらえたまま全体像を探るという系列の入門書で、本当に素晴らしい。翻訳は堀江宗正先生で、非常に的確である。このような哲学に学んで、著作の最後の章となる議論をもっと深めてみようと思う著作/翻訳でした。どうもありがとうございます!