動物からの脳死者への臓器移植の実験

エコノミストの記事で、アメリカのNYで動物からの臓器移植が成功したとのこと。これはまだ実験であり、その素材は脳死者であるとのこと。特別な遺伝子操作をしたブタから腎臓を取り、それを脳死者の体内で三日間保つことができたとのこと。この流れの一つの原因は、多数の患者が臓器移植を望んでいること、障害を持つ小さな子供を持つ親たちがいることなど。この超先端医療が持つ、複雑で深い議論を分析する論文も読んでみました。一番面白かったのは、最後の部分で、こうやって作られた特殊なブタは何だろうかという問いでした。

Is the pig as a whole a medical device or a medicinal product? Or is the pig merely an incubator for the organ transplant?” 

 

www.economist.com

 

www.nature.com

アメリカの州立精神病院の廃墟

アメリカのジョージア州の州都であるアトランタから南東に100マイル離れた場所にかつて存在した巨大な州立の精神病院への観光業を取材した記事である。ミルジヴィル (Milledgeville) という古い町の郊外にできた州立病院。膨大な敷地に作られた精神病院で、全盛期には12,000の病床があった。1960年代から急激に縮小して、現在ではごくわずかの患者しかいない。

ほぼ廃墟である精神病院は逆の観光に用いられている。その中で私に一番印象に残ったのは、膨大な「墓」である。患者の名前はなく、番号が記されているだけの細い板が、無言で延々と建てられている。番号から誰の板かわかるからだろうが、星条旗が添えられたものもあった。

BBCの映像もなかなかいい。ただ、最初はセイシェルの観光産業がわりと長い広告をしていて、これは廃墟病院の観光とは話が違いますね(笑)

 

www.bbc.com

大都市の土木工事

大都市の歴史の中には大規模な土木工事をする期間があって、アムステルダム、ロンドン、パリ、江戸などは17世紀から18世紀に川や台地に関する大きな工事がされて、それぞれの都市の個性を作り上げていく。特に最近「江戸の近縁」に住むようになり、精神病院の場所を考えるようになって、都市の個性がもたらすメリットと、それに伴う弊害のことを考えている。

今日のスミソニアンは大都市のティオティワカンがどのように川や陸地を大規模に操作して、かつての大都市を復活させたのかという非常に面白い記事。“We don’t live in the past, but we live with the legacies of past actions.” という名台詞がいいです。ぜひお読みください!

www.smithsonianmag.com

日本人のDNAと結核の西高東低

しばらく前からネット上の英語サイトで話題になっている日本人のDNAについての記事。歴史的に古い人骨を分析して、これまでの二つのタイプに比べて三つのタイプのDNAのグループがあるとわかったとのこと。これまでは縄文型、弥生型の二つで説明できていたが、新たに古墳型があることがわかったとのこと。もともと日本列島にいた人々、朝鮮半島から移住した人々、そして中国から移住した人々であるとのこと。これまでのさまざまな事実から、そうではないかと思われていた理論を支える大きな証拠であるとのこと。本を楽しみにしていますが、ともあれ、おめでとうございます。

DNAを分類するという、私ができない議論なので、偉い先生たちにお伺いしたい問題ですが、有名な結核の問題は、このDNAの三つの型の問題と関係するのですか? 結核の死亡と罹患は、東北地方・関東地方では少なく、関西地方・九州地方では高いという事実があります。私には一つの謎でした。研究者たちも「西高東低」と読んでいます。現在の数字を出すと、大阪府罹患率岩手県罹患率を較べると、前者は後者の6倍もある高いです。この極端な差は、なぜ起きているのか。DNAなのですか?私はまだ調べて初めてもいないのですが、教えていただければ。 

 

www.smithsonianmag.com

1920年代と2020年代の共通性

昨日の Smithsonian Magazineの、子供が持つcovid-19 に対する抵抗力の記事はとても面白かった。今日の記事も、方向性は違うけれども、とても面白い記事である。昨日の記事が社会科学と統計の議論であったのが、今日の記事は文化論と社会論の話である。1920年代のアメリカは永遠の繁栄をうたい、大量生産・大量消費・大衆娯楽が盛り上がる好調な社会であった。この楽天的な方向は2020年代にも現れている。今回の covid-19 の一段落の後にもアメリカの人々は新しい社会を楽しもうとしている。新しい生産と消費と娯楽がますます発展するだろう。しかし、これが本当に社会の正しい新しい方向なのだろうかという問い に対する答えは、非常に複雑である。長い文章ですが、ぜひ読んでくださいませ。

 

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第一次世界大戦の前線の病院で負傷した兵士らを描いたものです

 

www.smithsonianmag.com

covid-19 と子供の感染について

近い将来のコロナ患者がどうなるのか。この問題がプロの間で議論されており、私は末端だけ見るだけにしている。今朝読んだ Smithsonian Magazine がとても面白い。アメリカとイギリスのデータによると、子供が感染する割合は15%くらいで数字で言うと普通に多いが、子供が死亡する割合は1.5%くらいで非常に少ない。子供はcovid-19 に対する抵抗力を持っているのである。

これから先の議論は複雑である。しかし、21世紀の大人たちが死亡していくのに対し、同じ時期の子供たちは感染しても死なない仕組みを持っている。久しぶりに現代の危機に対する明るい未来を教える記事でした。ぜひお読みください。

 

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合衆国における子供の病院入院と死亡の割合

 

www.smithsonianmag.com

VERMICULAR という調理具と gruel / 粥というお料理

最近はかなりの部分を自炊しているため、 VERMICULAR という調理具を使っている。名古屋の中川運河で再興を果たした職人ベースの企業で、実佳や娘に勧められたものである。色々な意味で本当に素晴らしい調理具で、毎日使いながら感心するようになった。皆様もぜひお使いくださいませ。

 

my.vermicular.jp

 

一つ面白いのが vermicular という命名である。英語の話をすると、これは「蠕虫(ぜんちゅう)」の意味で、小さくて、うねうねして、何か気持ち悪い虫のような感じというような意味あいをもつ。その良くない意味の名称を、非常に水準が高い商品につけた一つの背景として、英語の gruel という単語、日本語の粥という単語と似ているのかなと考えている。

Gruel / 粥 は もちろんあまりよくない意味がある。病気や老齢化や貧困や処罰の意味合いがある。英語の Oliver Twist の冒頭のワークハウスがその意味で必ず引用される。一方で、最近は、繊細さとエレガントさを持つ方向にも使う。以下の記事を読んでいただきたい。

 

www.mentalfloss.com