Entries from 2013-05-01 to 1 month

フィリピンの近代化と民間習俗との闘い

Reyes, Raquel A.G., “Sex, Masturbation and Foetal Death: Filipino Physicians and Medical Mythology in the Late Nineteenth Century”, Social History of Medicine, 22, no.1, 2009: 45-60.西洋医学の導入にともなって、近代医学の視点で当地の民間習…

櫻井図南男「事態神経症に就て」

櫻井図南男「事態神経症に就て」『福岡医学雑誌』35(1942), 1283-1318.日本における戦争神経症と外傷性神経症についての古典的な論文の一つ。必読にして傑作の論文。「事態神経症」というのはブロイラーがある特定の事態に基づいて発生するものを「事態精神…

榊によるアイヌのイム論文

榊保三郎「イムバッコ(アイノ人に於ける一種の官能精神病)に就て(一月例会演説)」『東京医学会雑誌』15(1901), no.4, 1-15.榊が書いたアイヌのイム論は、精神病医がアイヌのイムを実際に観察して書いた唯一の論文として長いこと標準的なものであり、榊が…

江戸の藩医たち

必要があって、プロの近世史の研究者による医療史研究を読む。文献は、海原亮『近世医療の社会史―知識・技術・情報』(京都:吉川弘文館、2007)著者が色々な箇所に論文として出版したものに訂正を加えてまとめて一冊の書物にしたもので、それぞれの論文の実…

明治19年の神田のコレラ

ここしばらく、研究書や論文を読む暇がありません。 たまには、自分の研究の話をさせてください(笑)明治19年の東京のコレラを、町名ごと・一日ごとに患者の数が分かる資料を見つけて、データペース化して分析している。1500くらいの町名に関して、だいたい…

明治東京のスラム・クリアランス

必要があって、明治東京の市区改正を論じた古典を読む。文献は、藤森照信『明治の東京計画』(東京:岩波現代文庫、2004)明治14年に東京防火令が出て、中央三区(神田、日本橋、京橋)の主要街路および運河沿い家屋へのレンガ、石、蔵造りによる路線防火体…

漁村の疾病

漁民の歴史の本を読む。文献は、岡山達明『近代民衆の記録7 漁民』(東京:新人物往来社、1978)この本は、コレラの伝播のメカニズムを調べていて、そのヒントを得るために目を通してみた本で、いくつもの大きなヒントがあった。この記事では、そのことでな…

『モデラート・カンタービレ』

必要だというわけではなかったけど(笑)、マルグリット・デュラスの『モデラート・カンタービレ』を読む。河出文庫に収められている。もともとはサイゴンで暮らすフランス人としての植民地経験を自伝的に描いた『愛人』を仕事の関係で読んで面白かったのが…