Entries from 2013-08-01 to 1 month

『医療の歴史』より「病院の歴史」・第二節の草稿

おそらく公の場でいうのは初めてだと思いますが、『医療の歴史』(仮題)という書物を書いています。1500年以降の西欧を軸とする医療の歴史で、過去30年ほどの新しい医学史研究の視点をできるだけ総合した書物を意図していて、私が書くだろう書物の中では、…

中村江里「日本陸軍と戦争神経症」

皆さま 次回の医療・文化・社会研究会(旧医学史研究会)のご案内をさせていただきま す。直前になりましたら、リマインダーをお送りいたします。ふるってご参加く ださい。 --- 2013年度 医療・文化・社会研究会 第2回例会 発表者:中村江里さん(一橋大学…

『レオ・アフリカヌスの生涯 』(リブロポート, 1989)

レオ・アフリカヌス(c.1494-c.1554)は、グラナダに生まれ、フェズで育ったのち、地中海のイスラム世界の各地を回り、最後には捉えられてキリスト教に改宗した人物である。彼が著名な理由は『アフリカ地誌』と呼ばれている書物で、1526年に完成して1550年代…

「サイケデリック」と文学者と精神科医の二行詩

“psychedelic” という語が作られた経緯が面白いのでメモ。19世紀の半ばから、アヘン、ハシシ、メスカリンなどの向精神物質 (psychotropics)を服用してその効果を記すことは、ボードレール、ベンヤミン、アンリ・ミショーなどの古典的な作品を生んでいる。20…

血族結婚村と不適格者の淘汰

篠崎信男「血族結婚部落の人類学的調査概報―山梨県南巨摩郡西山村奈良田に於いて―」『人類学雑誌』vol.60, no.3: 1949: 197-100. 昭和18年9月に厚生省研究所・人口民族部が行った、血族結婚に関する優生学的研究が発表したもの。南巨摩郡の西山村の奈良田の…

モーパッサンの精神病短編二編

モーパッサン「オルラ」『モーパッサン短編集 III』青柳瑞穂訳、152-194. モーパッサンの「オルラ」は、セーヌ川沿いの街ルーアンに住む男が、精神が変調して最後には妄想に呑み込まれるようにして精神が荒廃していくありさまを描いた短編です。最初は妙な感…

ワークショップ「比較モダニズム―心理学・文学・情動」

9月14日(土曜日)に成蹊大学で国際ワークショップ「比較モダニズム論―心理学・文学・情動」が開催されます。 Comparative Modernisms: Psychology, Literature, and Affect —International Conference— 14 September 2013 Seikei University, Tokyo Financi…

高砂族の自殺

奥村二吉「高砂族の自殺」『台湾医学会雑誌』vol.42, 1943: 200-214. 著者の奥村二吉は、のちに岡山大学精神科の教授となり、内観療法を提唱したことで名高い。この論文は、昭和11年から15年に台湾の高砂族の自殺を調査して、死後の霊魂と自殺についての思想…

台湾原住民(高砂族)の精神医学的研究

米山達雄・分島俊「高砂族の精神医学的研究」『台湾医学会雑誌』vol.40, 臨時号、1941: 1-31. 民族の比較精神病学的な研究は、帝国医学の広がりや、クレペリンが20世紀の初頭に提唱したことなどから、世界各国で実施され、日本でも戦前には盛んであった。も…

アメリカ人類学者の精神医学的日本人論(1945年)

La Barre, Weston, “Some Observations on Character Structure in the Orient”, Psychiatry, vol.8, 1945: 319-342. 「人間に文化と言語の違いがあるからこそ、文化というものが存在し、そこに本質があることを意識したのである」と語る文化人類学者のラ・…

16世紀イタリアの<胆石・結石>は奇跡か異常か

Touber, Jetze, "Stones of passion: Stones in the internal organs as liminal phenomena between medical and religious knowledge in Renaissance Italy", Journal of the History of Ideas, 2013, 74(1): 23-44. 15世紀から16世紀のイタリアにおける聖…

精神医学的フィールドワーク: 京大の南方民族調査(1942年)

三浦百重・村上仁「南方民族の精神病」『精神神経学雑誌』vol.48, no.2: 1944: 69-78. 1930年代には精神医学フィールドワークが流行し、大和民族と大東亜共栄圏内のさまざまな民族を精神医学的に研究することが行われた。規模ははるかに大きいが、アメリカで…