血族結婚村と不適格者の淘汰

篠崎信男「血族結婚部落の人類学的調査概報―山梨県南巨摩郡西山村奈良田に於いて―」『人類学雑誌』vol.60, no.3: 1949: 197-100. 昭和18年9月に厚生省研究所・人口民族部が行った、血族結婚に関する優生学的研究が発表したもの。南巨摩郡の西山村の奈良田の調査。この地では住民のほとんどが深澤姓をなのり、いとこ、いとこ半、はとこ、叔父、めいなどの血族結婚を数代にわたって重ねたものであるが、その全貌は明らかでない。この孤立している村を隣の開かれている部落の湯島と対照させた。人口は両部落あわせて342人。GoogleMap で見ると、現代ではダムと発電所と温泉がある。 血族結婚の村とそうでない村では、体格などの差はあまりないが、肺活量、背筋力などの点で、奈良田のほうがはっきりと劣っている。問題の精神病は存在しない。レプラはそれらしい症状を示している老人はいたが、確かめることができなかった。 もっとも重要な部分は論文の結論部に付された以下の言葉である 「過去においてはかかる悪質の病気もあったようであるが、山中に隔離したりして現在は淘汰されたようである」 「本部落における血族結婚というものが与えた結果は、遺伝的には恐らく悪質遺伝子の発現を可能ならしめたこと、しかして恐らくこれら悪質遺伝者を淘汰してしまったことが伺える。というのは現在は必ずしも悪い病気は存していないからである」100