Entries from 2014-02-01 to 1 month

日露戦争の廃兵と精神病―真下飛泉の叙事唱歌から

日露戦争に関連する医療についての情報を記した研究ノートからメモ。真下飛泉なる作家が日露戦争をうたった叙事唱歌の中で、戦争時の負傷の後遺症が記されていること、その中に「狂気」が印象的な仕方で取り上げられていること。 菅修一「真下飛泉『学校及家…

女性の身体と知的労働―19世紀後半のアメリカ

アントワネット・ブラウン・ブラックウェル『自然界における両性 : 雌雄の進化と男女の教育論』小川眞里子・飯島亜衣訳(東京:法政大学出版局, 2010) 19世紀半ばから後半に欧米で女性解放が始まった時期の女性知識人の一人。オバーリン大学を卒業して最初…

皆吉淳平「医療と倫理」

皆吉淳平「医療と倫理」西原和久・油井清光編『現代人の社会学・入門―グローバル化時代の生活世界』(東京:有斐閣、2010)、203-221. グローバル化時代の医療の社会学についての学生向けのコンパクトで優れた解説。歴史学者にとっては、要点のリストだけで…

f福音主義と公衆衛生と巨大博愛団体

Ettling, John, The Germ of Laziness: Rockefeller Philanthropy and Public Health in the New South (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 1981) ロックフェラー財団は、キリスト教的博愛主義の精神に基づく巨大な慈善団体であり、医科学と公衆…

ペパン『エイズの起源』(みすず書房、2013)

エイズの歴史を通じて20世紀の医療・疾病のグローバル・ヒストリーを描いた傑作。国際保健衛生学はもちろん、帝国主義と医学・疾病の歴史を中心に歴史学者たちにとっても必読の書物である。来年のセミナーの課題図書の一つにしよう。 大きな特徴は医者が書い…

ベルツと井上圓了

菊地章太『妖怪学の祖 井上圓了』(東京:角川書店、2013) ベルツの「狐憑病論」と井上圓了の妖怪論の開始についての明確な記述があったのでメモ。 エルウィン・フォン・ベルツは明治の東大医学部の外国人教師であり、日本に25年間という長期にわたって滞在…

医学史の過去・現在・未来

「医学史の過去・現在・未来」、全体の草稿をアップします。ご批判などがありましたらご指摘いただければ。最終稿ではありませんので、まだ引用しないでください。 医学史の過去・現在・未来 鈴木晃仁(慶應義塾大学) 序論―「医学史」という領域について 医…