ベルツと井上圓了

菊地章太『妖怪学の祖 井上圓了』(東京:角川書店2013

ベルツの「狐憑病論」と井上圓了の妖怪論の開始についての明確な記述があったのでメモ。

 

 

エルウィン・フォン・ベルツは明治の東大医学部の外国人教師であり、日本に25年間という長期にわたって滞在して活躍し、もっとも著名なお雇い外国人の一人である。さまざまな著作の中で著名なものが「狐憑病論」で、1885年の『官報』、469号、470号に掲載されたほか、新聞などにも掲載された著作である。それよりも少し前から、東大理学部の箕作元八は『東洋学芸雑誌』に「奇怪不思議の研究」と題してイギリスの心霊研究について報告しており、このベルツの狐憑論を「本邦奇怪研究の第一着」と論じている。その翌年の1886年に、円了は「不思議研究会」を発足させた。これが、日本の迷信や憑き物・妖怪の信仰を特定し、これを合理性によって正しく直していく大きな運動の始まりである。