同じ新着雑誌からマルピーギの科学書の文体の分析を読む。文献は、Meli, Domenico Bertoloni, “Mechanistic Pathology and Therapy in the Medical Assayer of Marcelle Malpighi”, Medical History, 51(2007), 165-180.
17世紀後半に顕微鏡による観察を医学に導入したことで名高いマルチェロ・マルピーギ(Marcello Malpighi, 1628-94 ニヤっとクシょう(苦笑)するマルピーギ)の研究。マルピーギは人体や動物の身体の微細な構造を顕微鏡で観察し、腺の内部や毛細血管などを正確に観察して、機械論的な身体観の成立に大きく貢献した。しかしながら、マルピーギは、当時のイタリアの大学の指導的な医者たちから、顕微鏡の観察が医学に何の役に立つのか、もっと言えば臨床と治療に何の意味があるのかという批判を受けていた。これらの批判に対して、伝統的な治療法に変更をせまるような内蔵の構造を顕微鏡で明らかにしてマルピーギは対抗したが、この論文の主題はそちらのほうではなく、マルピーギが用いたレトリックである。
17世紀の前半までの科学者(自然哲学者)たちは、論争となると亀田大毅のような罵詈雑言(笑)を投げつけあうことも決して稀ではなかったが、世紀後半には科学者たちは総じて紳士的に振舞うようになり、科学の営みがポライトで公共的なものになっていく。そのような環境の中でどのようなスタイルで論争が行われたのかということを分析した論文である。道具立てと狙いはすごく面白いけれども、結論はガリレオの影響と、死後出版のものでは、死者のアドヴァンテージを生かして、より激しく直接的な論争のトーンであったというのが主たる発見である。