必要があって、古典古代の医学史の教科書を読む。文献は、Nutton, Vivian, Ancient Medicine (London: Routledge, 2004).
古典古代の医学史を授業で教えるときには、事項のあらましをさらってから、テムキンとエーデルシュタインを使っている。半世紀以上も前の研究者だけれども、たぶん標準的な選択だと思う。ナットンのこの書物は、テムキンらを不要にはしないだろうけれども、新しいスタンダードになるのは間違いない。 40年に及ぶ研鑽の末に書かれた一冊。これぞ古典学者という広く深い学識。複雑な事態を的確にえぐりだすような概念。特に、ローマ時代の医学の実践の問題についての考察は、初めて聞く話ばかりで、「蒙を啓かれた」というしかない。
画像は同書より。浣腸を命ずるガレノス。中世の写本だろうけれども、詳しい年代などは書いていなかった。