「長い長いお医者さんの話」

必要があって、カレル・チャペックの「長い長いお医者さんの話」を読む。家にあった中野好夫訳の岩波少年文庫版で読んだ。

話の発端は、山に住んで悪戯をして人を困らせていたマジャーシュという魔法使いが、あるときウメの種を喉に詰まらせてしまうことである。それを治すために集められた4人のお医者さんが、それぞれ自分が診た珍しい患者の話などをするという「額縁」構造を持った童話。

4人のお医者さんによって合計4つの「お話」が語られるわけだけれども、その一つ目が南にあるソリマン国のお姫様の話。うら若いお姫様は、急に衰弱して顔色は青白く、いつも咳をして気は沈みがち。心配した王さまがヨーロッパに医者を探しに使いをやり、医者と間違えて連れてこられた木こりが、宮殿の前の木を切り倒してお姫様の部屋に日光が当たり風通しが良くなると、お姫様はみるみる元気になり、パンとチーズという素朴な食べ物を美味しそうに食べるというもの。

二番目はヤカマシ小僧という悪戯者の妖精を治したお医者さんの話。この声が大きい妖精は、喉を痛めてお医者さんにかかるが、お医者さんは転地して街に出るように勧め、ヤカマシ小僧はその声量を生かした演説で政治家として成功するという話。三番目は年取ったカッパがリューマチで苦しんでいるのを、温泉に転地させて、カッパがお湯を汲む温泉は湯治場として繁盛するという話。四番目が骨折した愛らしい妖精の話で、これが一番くすぐりが多くて面白い。(「[妖精の]からだはぜんぶ光線でできていて、骨といってもすこしかたいエックス線がかよっているだけなのです」)この妖精を診たお医者さんは、アメリカのハリウッドに行って映画に出演するように勧める。

こうして一人が一つずつ話をし終わった4人のお医者さんたちは、マジャーシュの背中を思い切りどやしてウメの種を吐き出させるという「手術」をして、この魔法使いにも転地療法を勧める。それに従って魔法使いは「サハラ・サバク」に引っ越して、この国には魔法使いはひとりもいなくなりました、というオチがついている。

いやあ。こんなに楽しくて医学史教育に役に立つ話があるとは思わなかった。この話は、子供の頃には読んだことがあったんだけど。こういう話を読ませて解釈させると、頭が良いかどうか、すごく分るんだろうな。