『女嫌いのための小品集』

出張の飛行機の中で、パトリリア・ハイスミス『女嫌いのための小品集』を読む。宮脇孝雄訳で河出文庫から出ている。

愚かだったり卑劣だったり偏執狂的だったり、色々な女性主人公の醜い生き様を冷笑を浮かべて描いた短編を集めたもの。アメリカ風の下品なカリカチュアとすれすれのところでセンスが良いと私は思うけれども、フェミニストは苛立つかもしれない。特に原題の misogyny という言葉は、そのニュアンスが悪い方に急速に(たぶんこの数十年くらいのことだと思う)変わったという印象を持っていて、現在なら、いかに人気作家といえども、表題に選ぶのは難しい言葉なのだろうか。

私が一番気に入ったのは「出産狂」という物語。 主人公にとって結婚とは子供を生むことを意味するもので、家庭を築き守ることよりも、夫の精神的な支柱になることよりも、とにかく子供を生むことが彼女の幸せであり、それこそが結婚の真髄であると彼女は固く信じていた、そんな女性の物語。