フランス史のレファレンス

必要があって、19・20世紀フランス史概論のごく一部を読む。文献は、Zeldin, Theodore, A History of French Passions, 2 vols (Oxford: The Clarendon Press, 1979).

上下二巻、合計2000ページくらいの本で、1848年から1950年までのフランスの歴史を論じている。この時代のフランスについてちょっと事情を知りたいときに、時々見ることにしていて、レファレンスのように使っている。「医者」とか「新聞」とかいう章立てなので、レファレンス的な使い方ができる。「きっと、そういう目的のためにはもっといい本が出ているのだろう。ご存知の方は教えてください。

ゼルディンの本が最初に出版されたのは1973年で、そのときには、いわゆるアナール派が成果を上げていたが、ゼルディンの方法はずっと伝統的でヒューマニスティックなものである。それどころか、歴史は社会科学であると唱えるアナール派を意識して、歴史は人文学であり、歴史家の個性や想像力が必要な営みであると主張している。言いたいことは分かるし、ある文脈においては良いことを言っていると思う部分もないではない。プロの科学者や医者に、科学史や医学史を教えるとしたら、その意味はいったいなんだろうかというようなことをちょっと考えていて、ヒントをもらった。