酒井シズ監修・日本医師会編集『医界風土記』全六冊(京都:思文閣出版、1994)
たぶん10年ほど前の日本医史学会の「医史学興隆のために」というようなテーマのシンポジウムで、医史学の研究者ではない偉い先生が招待されて、「日本の医史学研究のかなりの部分は、<かびくさい郷土史>である」と言い放った。これは事実だと思う。
たぶん10年ほど前の日本医史学会の「医史学興隆のために」というようなテーマのシンポジウムで、医史学の研究者ではない偉い先生が招待されて、「日本の医史学研究のかなりの部分は、<かびくさい郷土史>である」と言い放った。これは事実だと思う。
そのかびくさい郷土史を改善するという方向ではなく、むしろ郷土史が存分に力を発揮できるような設定をして、それぞれの県ごと・地域ごとに、著名な医者の歴史を心ゆくまで語り倒してもらいましょうという企画が、『日医ニュース』に500回以上にわたって連載された「医界風土記」である。それぞれの地域の名うての医学の郷土史家たちが、郷土の著名な医者について、存分に健筆をふるった企画で、人気があって京都の思文閣から六巻本で単行本化されただけでなく、そのうちの三冊は、いま品切れ状態である。入手可能な三冊を買ってみたら、確かにこれは素晴らしい。医学の郷土史の精華がここで語られている。すぐに、アマゾンの古書で残りの三冊も注文した。この書物は、レファレンスの棚に置こう。