環境史と歴史地理学

必要があって、環境史と歴史地理学の研究の動向と問題をまとめた論文を読む。文献は、Williams, Michael, “The Relations of Environmental History and Historical Geography”, Journal of Historical Geography, 20(1994), 3-21. だいぶ前に書かれたものだけれども、新しい論文の内容要約の羅列というより、本質的な内容まで突っ込んだ枠組みのまとめになっていて、とてもためになった。

歴史学者も含めて人文社会科学の研究者の多くは、「環境」の問題をやや警戒している。これは、外国だとハンティントン(『気候と文明』は1922年に翻訳されている)、日本だと和辻哲郎(『風土』は1931年に刊行)やその後の梅棹忠夫などに代表される「(自然)環境が社会と文化を決定する」という方向の、決定論的な視点への敵意によるところが大きい。最近では、それにもう一つ敵意を抱く理由が付け加わって(笑)、環境運動が歴史研究に倫理を持ち込んでいることも、警戒する理由なのかもしれない。