医学史の中で一番コアな主題が、治療法、特に薬物についての歴史である。一昔前までは、医学史の中で薬物・治療法を登場させるときのパターンは二つしかなくて、一つ目は、当時使われていた面白い治療法を列挙するというヒストリオグラフィ(笑)、もう一つは、本当に効く治療法が現れたときに何が起きたかを記述する視点である。これを超えるのがなぜ難しいかというと、ひとつの大きな壁は、具体的な薬の名前がなかなか頭に入らないということがある。これも一つずつ憶えていくしかない。今回、昭和戦前期の精神病院で,公費の患者に使われた薬についてはかなり使い方が分かるようになった。