スロー・リーディング

たまたま書評で見かけた本を読んでみた。 「スロー・リーディング」についての本である。Miedema, John, Slow Reading (Duluth, Minnesota: Litwin Books, 2008) 著者は、図書館学・情報学を学んで、この本を書いたという。

伝統的な形でつくられた書物を読むことを、ネット上で「読む」ことと対比させて、前者を slow reading, 後者を fast reading と名付けたうえで、前者のさまざまな価値を称揚するという本である。インスピレーションはもちろん「スロー・フード」に代表される「スロー運動」である。現代社会のスピードと効率へのオブセッションから自由になって、書物と深く継続的にとりくみ、リンクによって気を散らされないような読み方が、質が高い人生である、という流れである。学術書ではないから、具体的な論証などは示されていないけれども、「スロー・リーディング」に関するリサーチの成果に随所で触れている。言っていることにはだいたい共感した。