『芸術新潮』11月号より「縄文の歩き方」
『芸術新潮』の11月号で「縄文の歩き方」という特集が組まれている。橋本麻里さんがゲスト・エディターになって、縄文式土器や土偶などの長く愛好されていたものに、縄文人の暮らしや食生活などの面白い企画を添えたものである。土器や土偶などの造形や形象の美しいものを選ぶセンスに感服する。宗左近、柳宗悦、川端康成が集めた深い趣きの土偶、信楽の MIHO ミュージアムで行われている土偶の展覧会などは目を奪われた。これらの作人や、諏訪で出土した<縄文のビーナス>や<仮面の女神>と呼ばれるそれぞれの作品は素晴らしい写真で強い印象を与えたので、もう少しゆっくりその作品の説明を聞きたかった。全体に、考古学者が取った写真で土偶を観るのに慣れている私たちにとって、今回の、芸術作品として撮った写真を眺めるのは素晴らしい経験だった。縄文の生活の中にある意味での「美術作品」を織り込む今回の企画はとても優れたもので、きっと単行本化の話も出ると思うけれども、その時には、いくつかの傑作については、ゆっくり見て識者の意見を読めるようなフォーマットにしていただけると、もっと楽しいと思う。