Rose, Nikolas, “The Politics of Life Itself”, Theory, Culture & Society, vol.18, no.6, 1-30: 2001.
Paul Rabinow and Nikolas Rose, “Biopower Today”, BioSocieties, 1, 195-217, 2006.
メモ:いずれもよく読まれている論文。前者はバイオポリティクスとリスクの概念を論じた古典的な論文。後者はアガンベンとネグリを批判してフーコーよりも枠組みを考えた優れた方法論の論文である。アガンベンが『ホモ・サケル』で引用して有名になったが、ナチの時代のドイツの優生学者Ottmar von Versucher の言葉に「政治とは人々の生命に形を与えることである」というものがある。優生学は19世紀の末から20世紀の初頭に成立した、衛生と規律を重んじる道徳的な行動と、生殖を制御する管理的な行動の後者と深く関係がある。1920年代から30年代にかけて、断種を行う優生学の法を作った国は、アメリカ、スイス、デンマーク、フィンランド、ドイツ、ノルウェイ、エストニア、アイスランド、メキシコ、キューバ、チェコスロバキア、ユーゴスラヴィア、リトアニア、ラトヴィア、ハンガリー、トルコ、そして1940年代の日本である。優生学的な断種は1970年代まで継続した国が多かった。20世紀はバイオパワーの時代であったことは間違いない。その内部にあったさまざまな方法は、一方では説得とコンサルティングがあり、対極には強制断種があるが、それらのあいだの政治的・道徳的な距離がいかに大きくとも、そこを善と悪、自発と強制のような二分法で考えることはできない。