医中誌Web の遡及的なデータ追加

日本における医学史研究の状況ははっきりと改善している。研究体制が整うまでにまだ揃っていないものもあるが、必要なものは徐々に揃ってきている。優れた研究書の登場、論点の形成、アーカイブズの発見、国際的なネットワークの形成などがそれにあたるだろう。その中で、ファイディング・ツールが使えるようになっていることも大きい。そのツールは1903年に創刊された『医学中央雑誌』である。それぞれの主題ごとにどのような論文や書物が刊行されたかについて、ある期間ごとに、網羅的に調べられて刊行されていたレファレンスである。1983年以降については、『医中誌Web』というサービスで電子的に刊行されている。問題は、それより前の、明治・大正・昭和期にあたる、日本の医学の現代にいたる形態がつくられていた時期の文献である。

 

数年前に国会図書館にアップされたのが、1903年から83年までのすべての期間の医中誌の画像情報である。これを使うと、この期間に発表されたすべての医学論文や書籍について、キーワードから探すことができる。たとえば「電気ショック療法」について書かれたテキストを網羅的に探したいと思ったら、キーワードなどを考えながらこの雑誌の該当箇所を探していけば、その主題について書かれた日本の文献を網羅的に知ることができる。あとはその文献を入手すればよい。 現在は、このシステムが国会図書館で稼働している。日本中のどこにいても、この期間の医療文献なら、もっとも網羅的なサーチができることになる。

 

ただし、このシステムでは、基本的に該当箇所のあたりを一頁ずつ繰っていくという作業が入る。1903年から1983年の情報に関しても、現在の医中誌のように、キーワードや人名で一発で引くことができないかと思うのが人情である(笑) そして、この動きが実現している。1903年から83年の、電子化されていない医中誌を OLD医中誌というとのことだが、それが1977年から83年までの7年分が医中誌Webに追加されることになった。医中誌Webに最新号が付け加わっていくだけでなく、遡及が始まったことになる。今回のアップワードは7年分であったが、このままのペースで1903年まで遡れば、20世紀初頭から現在までのある主題に関する医学論文をキーワード一発で提示できることになる。医中誌は人情がわかる出版社なのだろう(笑)

 

 

 

 

 

医中誌からのお知らせ|医学中央雑誌