セルボーンの自然誌

White, Gilbert, and 義雄 山内. セルボーンの博物誌. 講談社学術文庫.  Vol. [1018]: 講談社, 1992.
White, Gilbert, and Paul G. M. Foster. The Natural History of Selborne. The World's Classics. Oxford University Press, 1993.
 

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実佳が行っているチョートン・ハウスはセルボーンの近くである。次の日曜日くらいに、遊びにいくらしい。私も一度行ってみたい場所である。セルボーンという村は、イギリスのハンプシャーの小さな村であるが、18世紀の末に、その村の牧師のギルバート・ホワイトが書いた書物舞台となった村である。この書物の自然誌に関する部分が、現在では『セルボーンの自然誌』として古典となっている。ペンギンやオクスフォード大出版局から、優れたイントロと注釈が付き、挿絵を入れた書物が出版され続けている。 特に、バードウオッチングの部分が傑作として名高い。英語の文章は、柔らかさがあって、私は素晴らしいと思う。日本語でも偉大な英文学者たちが定期的に訳し替えている。私は英語は古いオックスフォード・クラシックスを持ってて、日本語は山内義雄講談社学術文庫を持っている。アマゾンに行ってみたら、アン・シコード先生がイントロと註をつけた新しいオクスフォード版が出ていたので、喜んで買っておいた。なお、日本のアマゾンでは、ペンギンとオクスフォードが混乱しているので、買う時には気を付けてください、
 
『セルボーンの博物誌』を読んでいたら、「ハンセン病の克服」という文章があったので、内容をメモ。 日本語版では、私が見ている原文にはない見出しがつけられていて、そのタイトルが「ハンセン病の克服」である。バリントンへの手紙の Letter 37である。
 
セルボーンの村には、手のひらと足の裏だけが侵される特別なハンセン病を患う人物がいた。子供の頃からこの病気のため歩いたり仕事したりできず、30歳で死ぬまで村の負担になっていた。この病気は、かつては全ヨーロッパで流行していた。イギリスでもあちこちに療養所があった。しかし、現在ではハンセン病は非常にまれな疾病になった。このようなハンセン病の衰退の理由を考えたときに、やはり栄養と生活の改善が大きいだろう。かつては肉や魚は、塩漬けの質が悪い物であったが、今では牛の生肉が手に入る。昔はすぐに汚くなる毛のシャツが肌着であったが、今はリネンのシャツを誰もが来ている。毛のシャツを着ているのは貧乏なウェールズ人だけである。パンも、昔のような皮つきの小麦粉や豆があるパンではなく、小麦だけの白いパンを食べることができる。これは、血液を甘くして、体液をふさわしいものにする。野菜もたくさん食べている。だからハンセン病は克服されたのだろう。
 
医学史的には、どの部分をあまり意味をなさない。でも、18世紀の経済発展を伸び伸びとたたえる態度は、不思議な好感を与える。
 
白い小麦粉で作ったパンについて。私は今でも皮を全部取って白くした小麦粉で作ったパンが好きである。トーストにしたり、日曜の朝にはフレンチトーストを作ってもらったりする。心の底では、このせいで健康なんだと思うけど、授業や論文ではもちろん言わないようにしている(笑)実佳は最初は困惑したけれども、誰にも迷惑がかからないし、実佳が有名なパン屋で買ってくるようなパンも食べるから、二人で食べるパンと私の白いパンと、二種類のパンを買ってくれる。