中国のらい病・ハンセン病

Burns, Susan L. Kingdom of the Sick: A History of Leprosy and Japan. University of Hawaiʻi Press, 2019.
Leung, Angela Ki Che, 梁, 其姿. Leprosy in China: A History. Columbia University Press, 2009. Studies of the East Asian Institute.

バーンズ先生が日本のハンセン病の書物を出版された。扱う時代は中世から現代までと長期にわたり、主題も、政治、宗教、文学、患者の権限、そして1990年代以降の victimology と呼ぶことができる歴史の書き方などと、非常に多様である。多様な視点を埋め込む通史であると考えていい。

これと似た手法を取っているのが、2009年に刊行されたアンジェラ・リューン先生の中国のハンセン病の書物である。これは古代から現代までの中国のハンセン病に関する通史である。

中国にはいくつかの大きな特徴があった。一つは隔離の歴史的な経緯が、西洋とも日本とも異なったシステムであったことである。中国では、らい病の患者を隔離するという体制が、それぞれの地区がリードをとって、16世紀くらいから華南で発展したことである。巻末に一覧表があるので見ていただきたい。ヨーロッパでは、1100年くらいから隔離の施設がそれぞれの都市や村で20,000施設も作られ、1500年にはおそらくらい病自体が減少して隔離体制は消えていった。日本では、隔離をした施設は中世に設立されたが、それらがほとんど発展しなかった。

もう一つが1900年前後の中国人の世界拡散である。非常に多数の中国人が世界各地に進出し、彼らがしばしばハンセン病をもっていたので、ヨーロッパは、中国人がハンセン病を世界に広めているという想像力の産物を作り出した。その意味で、中国のハンセン病は多くの帝国主義者にとって、深い問題であり、それを打ち破るためにキリスト教が中国で活躍していた。たしかに日本と異なった風景だと思う。

バーンズ先生の書物もリューン先生の書物も、とても優れた書物である。ぜひご覧くださいませ。