東大の非常勤で病院やホスピタルを通史で教える授業があり、準備を進めている。中世ヨーロッパのハンセン病収容所を一回で講義する授業で、ハンセン病の患者に対する差別的で攻撃的な態度と、そのような患者を許すことがキリスト教の特徴であるという肯定的な態度の双方を教えなければならない。そこで便利になるのが Carole Rawcliffe, Leprosy in Medieval England (2006) で、これをみると差別性と肯定性の双方を地図で憶えることができる。差別性を段階を持ったものとして描くことができる。これは中世のノリッジの地図で、そこでは、ホスピタルや、老人を中心とする救貧院は、街の中心ではないが、壁の内側に置かれた施設である。一方、壁の外側にはハンセン病患者の収容所を置く。しかし、それらはどれも壁の直近であって、世界の果てではない。この両義性をきちんと説明しなければならない。もうひとつ、同じような資料で、ルーアンの街と近郊の地図を使っている Brenner の書物もあり、これは現代の地図に修道院とハンセン病患者の収容所を書き込んでみた。