Gruber, Henry. "Indirect Evidence for the Social Impact of the Justinianic Pandemic: Episcopal Burial and Conciliar Legislation in Visigothic Hispania." Journal of Late Antiquity, vol. 11, no. 1, 2018, pp. 193-215.
ペストの第一回のパンデミックと呼ばれている大流行は、ユスティニアヌスのペストなどとも呼ばれ、6世紀中葉から8世紀くらいまで継続している。文書の史料として著名なものはプロコピウスの『戦史』の1章にわたる丁寧な記述であり、医学史上の価値が非常に高い記述である。それ以外の文書の史料は少ない。一方で、DNA史料は次々と発見されている。私にはこの原理がわかっていないが、ペスト菌の痕跡を示す人骨の方は各地で次々と発見されている。これらの地域では文書史料が存在しないことが多い。これは仕方がない部分もある。
しかし、DNA史料の発見だけで疾病史が進むという状況はちょっと微妙なところである。そこで、この論文が面白いことを言っている。別の文書を使ってみればいいということである。疫病があって大量の死があったとか、その疫病では内ももの鼠径部に膨らみができたとか、そのような言及がなくていい。別のタイプの史料、ここではキリスト教の司教の埋葬の記述を使うことができるという主張である。もしこのような史料を使うことができるのなら、研究が面白く発展するだろう。