色々なお仕事が遅れている一つの理由は「けいそうビブリオフィル」に連載している「医学史はどんな学問か」を書いていたからです。今回は18世紀の啓蒙主義で、あと少しで完成するところまで来ました。
今回は18世紀の啓蒙主義の時代である。ヨーロッパ全体に影響力を与える個人はいないが、各地で比較的新しい個性を発展させて、それぞれの個性がある医学を発展させた教授たちという枠組みで書いた。オランダ、ドイツ、イタリア、スコットランド、フランスについて別の節にするのが自然だろうと思い、それぞれの標準的な英語文献を読んでまとめた。
お世話になった本の一冊は、アルブレヒト・フォン・ハラーの実験を、レトロアクティヴに業績評価をした本である(笑)ハラーはもともとはスイスのベルンで生まれ、ドイツのゲッティンゲンの解剖学教授として非常にインパクトが強い実験を1752年に行い、それがヨーロッパのあちこちの都市で追試の実験の対象となった。これが「あちこちで」という形ではなく、きっちりしたリサーチを行った新しい視点の業績である。ヨーロッパのどこで行われ、それぞれの地域でどのような違いがあるのかを分析した素晴らしい成果である。Steinke, Hubert. Irritating Experiments: Haller's Concept and the European Controversy on Irritability and Sensibility, 1750-90. Rodopi. 2005. という書物である。
1752年の実験で、その翌年の 1753年から10年ほどを見ると、まず数的に最も多いのがイタリアであり、それにフランスとドイツが続く。ドイツはほぼ半分がハラー自身が教えていた新設のゲッティンゲン医学部である。それから実験のあり方だが、ドイツでは教授と医学生というパターンが最も多いのに対し、イタリアでは内科医、外科医、医学生ではない知識人、医学関係ではない知識人や他の教授たちが多いという特徴がある。表はこのようになっています。
この書物を本気で買おうとすると15,000円。日本の大学図書館では専修大学だけが所有している。きっと石塚先生が買ってくださったのだろう。また、助けてくださった廣川先生にも心から感謝いたします。素晴らしい書物でした。
国 | 件数 | 都市名 |
イタリア | 27 | フィレンツェ6、ローマ5、ボローニャ3 |
フランス | 17 | パリ8、モンペリエ6 |
ドイツ/スイス | 15 | ゲッティンゲン7、バーゼル3 |
オランダ | 9 | グローニンゲン4、ライデン4 |
イギリス | 6 | エディンバラ5 |
その他 | 6 | プラハ3、コペンハーゲン2 |