幻覚と錯覚

週刊医学界新聞の楽しいコーナーの医学と語源。今回は幻覚と錯覚のとても面白い比較。
 
幻覚は刺激がないのに知覚を生じるもの。幻視・幻聴が多い。幻聴の中では、音楽性の幻聴が有名であり、側頭葉や「橋」の脳卒中の後に発生する。有名であると書いているのは、おそらくザックスの著作によるものだろう。それから、「橋」というのは、読み方は「きょう」であり、「中枢神経系を構成する重要な部位が集まる「脳幹」に含まれる部位」である。もともとは、16世紀に活躍したイタリアの解剖学者 Contanzo Varolio (1543-1575) により、橋という意味のラテン語 pons と命名された部位である。現在でも日本語で「ヴァローリオ橋」と言う。
 
幻という漢字の左半分は「いとがしら」。糸の先端部の細い部分である。右半分の「フ」のような部分は木にぶら下げるという意味である。二つを合わせると染色をした糸を木の枝にかけて、色が色々にかわる様子である。そこから日本語の「まぼろし」となる。これは<目(ま)惚(ぼ)かし>という感じになる。あるいは<目(ま)朧(ぼ)>という感じである。この「いとがしら」は、幼や幽などはそれと分かる。幾にはいっているのは分かりにくいが、これは幾何学の geometry の音であるとのこと。
 
錯覚は、対象を誤って知覚することである。この「錯」は、金属が色々と数多く存在している状態であるという。