Lu, S. X. (2019). "Eastward Ho! Japanese Settler Colonialism in Hokkaido and the Making of Japanese Migration to the American West, 1869–1888." The Journal of Asian Studies 78(3): 521-547.
少年時代には、アイヌが18世紀末に起こした反乱である「ナシリ・メナシの戦い」(「国後・目梨の戦い」)を中心とする『魔神の海』を愛読していました。とても良い作品でした。それからだいぶ空白があって、アイヌに関する知識がほぼゼロになってしまってから、戦前の精神医学による優生学研究を少ししたので、まだまだ空白が多い。その中で、明治維新以降の日本の帝国主義と人口問題に関して、アメリカの大きな影響を論じた仕事を読んだ。日本の優生学と人口の話を結び付ける場面で、ドイツの優生学の話をいれる論文を書くときに、とても大きな一つの枝のようになる、素晴らしい論文です。アメリカの西部の開拓モデルと、ドイツの優生学的な発想の二つを見ることができるだろうという発想ですね。
ついでに書くと『魔神の海』を Kindle で 500円くらいで読むことができるので、久しぶりに読んでみた。よく考えたら当たり前なのかもしれないが、攻撃的なパンフレットではなく、洗練された図式を持っている。当時のエゾを理解するのに、アイヌと階級制の日本とロシアの双方の視点を読み込んで、非常に洗練された図式になっている。また、飢饉から守る米という発想、そのための労働という発想、流行病に襲われるようになったこと、そして日本人が持つ洗練された医学と薬学という発想があった。特に最後の部分のアイヌは日本の医学薬学が洗練されていると考えているという部分は、覚えておこう。