『ドン・パスクワーレ』と19世紀イタリアの政治社会

しばらく前にドニゼッティ『ドン・パスクワーレ』を観た。新国立劇場のプログラムはしばらく前から水準が高く、林真理子がどうでもいい文章を書くというようなことはない。今回は水谷先生という方が「オペラ・ブッファからロマンティック・コメディへの転換」という文章を書いていらして、きっと基本的な知識なのだろうけれども、17世紀のイタリアにおけるオペラの様子、モーツアルト、イタリアの19世紀初頭の様子、そしてイタリアの19世紀の様子の順で説明して下さり、素晴らしくよく分かる記述だった。

「イタリア」を一括りにせずに、いくつかの都市に分けて考えることが大切である。また、ロッシーニドニゼッティヴェルディは、前者は1810年代、後者は1840年代ということで、王政復古の時期か、新しい民主的な政治なのかも違うとこと。たまたましばらく前に19世紀のイタリアの作家マンゾーニが、17世紀のミラノのペストを描いた『いいなづけ』を読んで、イタリアの文学における勢いを感じたこともあって、『ドン・パスクワーレ』が持つイタリアの力が分かりました。