外科医が内に持つ共同墓地

Henry Marsh 先生はイギリスの脳外科医。もともとは政治学、哲学、経済学などを学んでいたが、最後に医学を学び脳神経外科の教授となった。彼が2014年に刊行した Do No Harm: Stories of Life, Death and Brain Surgeryは、脳外科医が生と死の間で仕事をしていることについて、実際の事例を繰り込みながら、情念と正直さを描いている傑作である。特に冒頭は、神経膠腫を目の前にする患者、患者の妻、そしてマーシュ先生の話で、そこで語られることが、手術が成功せず、数多くの患者の死を引き起こす外科医は、自らの内部に共同墓地を持っていることである。これは、Rene Leriche, La philisophie de la chirurgie (1951) からの引用で、以下のようなものである。
 
Every surgeon carries within himself a small cemetery, where from time to time he goes to pray - a place of bitterness and regret, where he must look for an explanation for his failures.