シトルリンと日本の農業化学

今日の最後の項目は「シトルリン」。最近の日本の医学史家たちには馴染み深い名称である。もともとは1930年に鈴木梅太郎の弟子であった東大農学部の和田光徳が新しいアミノ酸として発見したと言われてきたが、citrulline という単語自体は1930年以前に頻繁に現れている。もともとは citrullus という語は「スイカ」の意味で、好きか嫌いかは別として特有の味と香りを持っている。そこから化学者と農業化学者が研究に向かうのはある意味で当然である。
 
その中で1914年に東大農学部の古賀弥太郎と大嶽了が同じような化学式の発想で書き、それを発展させて、1930年の和田の業績にいたるのであるという細かいけれども重要な論文がある。2011年の日本医史学雑誌に発表された成果である。英語のWikipedia でも引用されている。日本語のウィキペディアでは「シトルリンが1930年に発見された」という記事のままである。ちなみに、私はお会いしたことはないが、この英語論文を書いたのはUCLの自然科学系の先生の確かな業績である。以下をご覧くださいませ!
 
 
和田, 光徳. "西瓜中の一新アミノ酸に就て." 日本農芸化学会誌, vol. 6, no. 5, 1930, pp. 474-484,  doi:10.1271/nogeikagaku1924.6.474.