発疹チフスと腸チフス。医学史の初心者にとってこの二つを区別することが、ある意味で感染症の歴史家への第一歩である(笑)今回『医療英会話キーワード辞典』の「チフス」の項目で、<「チフス」には三つある、一つは腸チフス、一つはパラチフス、もう一つが発疹チフスである>という記述があった。これは私が教えていることとかなり違って、静かに驚愕して、ちょっと調べたが、やはり現在の日本でもこういう三つのチフスという考えは少数派であるとのこと。日本語の wikipedia を見てください。
しかし、日本語の wikipedia でも驚いたのが、アンネ・フランクが「チフス」で死んだという指摘。これも私が驚愕した発言である。確かに腸チフスと発疹チフスは見た目が似ているけれども、発疹チフスは昔から刑務所などで流行するから、アウシュヴィッツでは発疹チフスが流行し、アンネ・フランクも「発疹チフス」の被害者と考えられている。東京でも数少ない発疹チフスはたしか土木労働者のバラックで流行した。腸チフスは戦前の東京ではブルジョワジーがかかる病気であった。
やはりこの二つの疾病は難しいのだろうか。