ティッチボーン裁判事件の記事

今日はもう一つ。ティッチボーン裁判事件という興味深い19世紀の事件についての素晴らしい記事。

貴族であったティッチボーン卿 (Roger Tichborne, 1829-1854?)が行方不明になり、10年後ほどに、アーサー・オートン (1834-1898) が我こそはティッチボーン卿であると名乗り出た有名な事件である。この記事も触れる色々な文学作品があり、私はボルヘスが大好きだが、言及されていた書物もあと少し読むことにしよう。

もちろん自己とメディアの双方が影響を与え合って起きた事件である。16世紀フランスの マルタン・ゲール事件や、カルロ・ギンスブルクが描くイタリアのメノッキオのように、自分が描く何かになって法的な事件となる事例は数多い。しかし、19世紀になると、メディアの力を利用して自分が個性を持つものであることを主張する事例も出てくる。アメリカで有名な事例だと21世紀の Anna Delvey 事件もあるし、日本でも数多くのメディアを利用したものがある。ティッチボーン裁判事件は、メディアが急速に参加していくものの一つだろうと思う。

 

daily.jstor.org