Entries from 2019-09-01 to 1 month

20世紀初頭の欧米における新しい精神病院の形成

Scull, Andrew. "Creating a New Psychiatry: On the Origins of Non-Institutional Psychiatry in the USA, 1900–50." vol. 29, no. 4, 2018, pp. 389-408, doi:10.1177/0957154x18793596. 19世紀末から20世紀中葉の欧米において、精神病院は多様化をはじめ…

上高地と奈川渡ダム

上高地に行くまでの間に奈川渡ダムという大きなダムがある。自家用車で行けるぎりぎりの部分にある。これは東京電力が揚水発電をしている大きなダムである。長野県だから60ヘルツの中部電力の領域であるが、そこでは東京電力の50ヘルツで作られ、東京地域に…

発酵の文化

小倉, ヒラク. 発酵文化人類学 : 微生物から見た社会のカタチ. 木楽舎, 2017. 発酵文化人類学という面白いタイトルの本があったので目を通した。大学時代には文化人類学を学び、そこから発酵という自然科学と科学技術の主題を取り上げることを考えた。これを…

からゆきさんと狂気の唄

倉橋, 正直. からゆきさんの唄. 共栄書房, 1990. 「からゆきさん」と呼ばれる日本の売春婦がいる。出身は主として九州で、長崎県の島原半島や熊本県の天草諸島などが多い。中国や東南アジアが中心で、ロシア(ソ連)やアメリカにも出張した。もともと貧しい…

21世紀のロンドンの日本食(笑)

www.lrb.co.uk LRB のしばらく前の記事を読んでいた。もともとは、19世紀から20世紀初頭にかけて、ロンドンのレストランがどのように変わったのかとたどる学術的な本の書評である。第一次世界大戦がシェフやウェイターを帰国させて、それがロンドンの食事に…

ベランダのカエル君

アマガエルは周りに自分の皮膚の色を合わせて、そこに溶け込むことができる。家のベランダに住み着いたアマガエルは、もちろんバラやハーブと一体化して緑色になることもできるが、基本的にはベランダと一体化しています。 ベランダの壁と一体化するカエル君…

二十四節季の白露

少し遅れたけれども、9月8日は二十四節気の白露(はくろ)。白露は朝に草花につく水滴をあらわし、立秋の次候で登場した美しい言葉である。これは仲秋8月、建酉(けんゆう)の月の節気。太陽は黄経165度に達する。 初候と次候は野鳥の移動に関する美しい対比…

「カフェー」とは何か

喜多, 壮一郎 and 猛 尾佐竹. 売淫、掏摸・賭博. vol. 第6巻, クレス出版, 2008. 近代犯罪科学選集. 1930年に日本で売り出された「近代犯罪科学選集」という面白いシリーズがあり、そこで売淫と掏摸・賭博の歴史を眺めた一冊がある。とりあえず目を通してお…

教養研究センター基盤研究  文理連接プロジェクト 医学史と生命科学論 第4回、第5回、第6回のお知らせ

lib-arts.hc.keio.ac.jp 慶應義塾大学 日吉キャンパスにおける教養研究センターの「文理連接プロジェクト」。第4回、第5回、第6回のお知らせです。医療経済学の後藤先生、医療・疾病と文学の小川先生、歴史学の片山先生の研究報告になります。ぜひお出でくだ…

伊藤晴雨「責めの研究」

伊藤晴雨(いとう・せいう 1882-1961) は日本の画家である。責め絵の作成や、妻をモデルとした責めの写真で有名である。彼が書いた「責めの研究」という文章が面白いことを書いていて、それらをメモ。『世界の刑罰・性犯・変態の研究 』が1930年に刊行され、…

ヨーロッパ中央部の超複雑さ

ドイツ人の友人とメールを交わしていて、自分の地理的な無知を思い知る。ポイントはドイツとスイスとオーストリアが接する部分であり、コンスタンツ湖(またはボーデン湖)の感覚である。コンスタンツ湖やその周辺の街は非常に美しい。そのあたりの小さいけ…

荒物商と小間物商

荒物と小間物の区別がよくつかなったので、国語辞典を引いてメモ。他にも、小間物針や糸などもあり、かなり小さくて細かく、それよりも大きいものが荒物であると憶えておきます(笑) 家庭で使う雑貨類。ちり取り、ほうき、ざるなど、おもに台所などで使う家…

仕事の時間中はこれに心を打ち込み、仕事時間の後は心を解放してスポーツや遊びで緊張を解くこと

NHK のニュースがよく熱中症の危機を叫んでいるが、私自身は熱中症や日射病や熱射病に罹らない、あるいは自分でそう思っていることもあって、生活の中で対応できていない。その中で面白い史実を見つけたのでメモ。タイトルはここから取っています。 「これら…

蝶の楽園

アナ・パヴァードという園芸家がいる。私がとても好きな園芸家で、チューリップの話は翻訳もされているし、先日は植物の分類の歴史が楽しかった。その彼女が園芸の一年のような本を書いていて、一月に始まって十二月に終わる枠組みの中で、園芸の楽しさを描…

映画『トールキン 旅の始まり』を観ました!

www.foxmovies-jp.com トールキンという作家。恥ずかしい話だが、まだ作品を読んではいない(恥)『指輪物語』や『ホビット』の映画は、もちろん家族で何度も見たし、DVDも持っているが、この原作を読んだことがない。ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキ…

ハンセン病と「アウスザッツ」という語の使い方

三井美澄『太平洋戦争と私』自費出版 ドイツ語を日本語の記述の中に混合させる手法として幾つかの基本的な文献がある。2006年に『医学界新聞』に12回にわたって連載された「教養としての医者語」という記事が基本的なものだろう。著者はディレッタント・ゲン…