『ローズマリーの赤ちゃん』


未読山の中から、アイラ・レヴィンローズマリーの赤ちゃん高橋泰邦訳(東京:早川書房、1968) を読む。あまりに未読山に長くあったので、なぜこの本を読まなければならないのか分らなかったけど、少し読み出して、これは必読書だと思い出した(笑) 同じ著者の『ステップフォードの妻たち』を読んだときに、現代社会の女性の身体というようなテーマを考えていた。以下はネタバレがあります。

ニューヨークの古いアパートに引っ越してきた若い夫婦の妻(ローズマリー)が、サタニズム(悪魔崇拝)を信じる狂信者たちの謀略の犠牲になって、サタンの子を妊娠させられ、出産させられる。アパートの住人たちや、産婦人科医たちはもちろん、旦那までがサタニズムの信者で、ローズマリーに悪魔の子を生ませる共謀に加担している。話としては荒唐無稽だけれども、妊娠期間に話を設定したところが説得力があっていい。胎児が成長するのに応じて、疑惑がクレッシェンドしていって、出産と同時に全ての陰謀が明らかにされるという流れも自然である。何よりも、自分の体の中にいる胎児が、強烈に一体感を感じるものでもあり、一方で全くの他者とも感じられるような、曖昧な両義性がすごくうまく使われているようにも思った。妊娠の初期をめぐるセカンドオピニオンをとることについての問題だとか、隣人(もちろん悪魔教の信奉者)の善意の飲み物をめぐる「出産は共同体のもの」というようなテーマで使える部分もあった。20世紀の妊娠と出産の歴史を学生に説明するときに、使える話が満載。 

画像は、ポランスキー監督の映画のポスター。いつものことだけど、私はもちろん観ていません(笑)