もう一回バーミンガムの話題を。
バーミンガム大学には近現代の医学教育の歴史を研究している優れた医学史家がいて、大学医学部が所蔵する過去の教育・研究用のマテリアルをよく知っている。その中に、昔の医学部なら必ず持っていてよく使った病理標本(今の医学部でもあると思うけど)が数百点あって、スライスされた脳とか、放射線学の教授の左手で被曝の影響がはっきりとわかるものだとか、まあ、その手のやつである(笑)
これを死蔵したり、博物館に並べるのではなくて、学生たちが日常的に勉強する空間に並べようという企画で、学生用のPCセンターをぐるりと囲む形でこの数百の標本が並べられている。学生たちは、19世紀の標本にぐるりと取り囲まれて、レポートを書いたり雑誌をオンラインで読んだりしている。延々と続く標本の棚と、それに囲まれて並ぶPCのディスプレイの対比は、独特の雰囲気を持っていた。19世紀の身体を背中に感じながら21世紀のテクノロジーで勉強するというのは、どんな経験なんだろう。でも、真夜中にあそこで一人でレポートを書くのは、私は絶対に嫌だ(笑)
写真はPCセンター。柱と柱の間の壁に、部屋をぐるりと囲むように棚が取り付けてあって、そこに病理標本が並んでいる。手を伸ばして標本を取ることもできる。