出張の飛行機の中で映画を観る。アカデミー賞の外国映画賞を受賞した話題作『おくりびと』を観る。以下は無駄話で、ネタばれがあります。
上京してチェリストになるのが夢だった主人公が、夢破れて山形の田舎の生まれ故郷に帰り、そこで新聞の求人広告に応募して始めた仕事が「納棺師」だったことから、この仕事の魅力に引き込まれていく話。まず、納棺師という設定が素晴らしい。幼い頃に家族を捨てて出て行った父親を主人公はずっと恨んで憎んでいるが、父親が死んで納棺して和解するというエンディングもいい。山形の田舎のスローな雰囲気の映像もいい。最初の仕事が死後二週間たって腐乱した一人暮らしの老人のものだったとか、性同一障害だった若者に施す死化粧は男か女かとかいった、挿入される小さなエピソードも、スローな雰囲気に合っている。山崎勉や吉行和子といった名優たちの名演技も渋くていい。主人公の奥さん役で、何も分かってないという設定の役を地で演じている広末諒子さんも、映画の魅力の一部になっていると言っておく。ただ、栄誉ある賞を獲った映画に生意気なことを言うようだけど、主人公は独身という設定でもよかったし、東京で奥さんと離婚して田舎に帰るという設定でもよかったかもしれない(笑)。