間違えて『雨の名前』という本を買ってしまった。文献は、高橋順子『雨の名前』(小学館、2002)
角川書店から『ネイチャー・プロ』というシリーズが出ている。写真集と図鑑と歳時記を組み合わせたような人気が高い美しい小型の本で、私は『色の名前』『空の名前』の二冊を持っている。色の名前や雲の名前を知りたいときにページを繰ると、美しい写真に、俳句や古典の一節などの用例が配されていて、殺伐とした人生が少しだけ豊かになったような錯覚に陥ることができる。
何かの広告で『雨の名前』という歳時記系の本が出ているとしって、そうか、あのシリーズには「雨の名前」もあったのかと思って注文したら、そのシリーズとは無関係で、出版社も、こちらは小学館だった。角川のシリーズの方は、ちゃんとした歳時記と図鑑の機能をそれなりに持っているのに対して、小学館は、著者のエッセイに写真を添えたものが企画の中心で、ちょっとがっかりした。 エッセイはそれなりに美しいのかもしれないけれども、レファレンスだと思って買った本が実は論文集だったときの失望に似たものがある。
一つだけ、どうでもいいことを覚えることにした。「猫毛雨」(ねこんけあめ)という雨の名前がある。佐賀県唐津市では小雨のこと、宮崎県日向では霧雨のことを言う。こまかな雨を猫のやわらかな毛にたとえたものであるという。ここには書いていないけれども、きっと、春の霧雨のような、暖かい季節の雨なんだろうな。
あとは、掲載されていた芭蕉の俳諧が、解りやすくて憶えやすい。
面白し 雪にやならん 冬の雨 芭蕉