国際博覧会と医学



必要があって、アメリカの国際博覧会における衛生関係の展示の研究書を読む。文献は、Brown, Julie K., Health and Medicine on Display: International Expositions in the United States, 1876-1904 (Cambridge, Mass.: MIT Press, 2009)

日本の「衛生博覧会」は、グロテスクな人体や江戸川乱歩のエログロ探偵小説などのキワモノ系の興味に訴えて、単行本が私の知るだけでも二冊出ている。どちらも悪い本ではないけれども、深い洞察にはほど遠い。

で、衛生博覧会についていい本がないかと思っていて、この書物の広告を見ただけで買ってしまった。著者も知らないし書評も読まずに本を買うのは珍しいのだけれども、やっぱり成功しなかった。19世紀の末から20世紀にかけてアメリカで開かれた国際博覧会の医学・衛生関連の展示の写真を見せて、それに説明を加えた本である。MITから出ている本だし、もう少し分析的な議論があるかと思っていた。ただ、写真は面白かったし、色々とインスピレーションはあった。博覧会は、商品の見本市としての機能を強く持っていたから、医者・病院用の商品が陳列される。医療器械とか解剖模型とかはこの部類に属する。(確か、日本の内国勧業博覧会でも、解剖人体模型が出されたと思う。)それに、social economy という、公共の自治体が出す公衆衛生の展示があり、もうひとつ、陸海軍が進んだ医療設備を展示していた。

画像は本書より。看護婦の人形と、精神病院の過去(悪い)と未来(善い)。 看護婦人形は、当時の女の子に人気があったのだろうな。