ウェルズ「盗まれた身体」
『タイム・マシン』に入っていた短編。霊魂が身体を離脱することを主題にして、催眠術、降霊術、伝心と身体幻像の伝送など、当時流行していたオカルト的な事柄を背景にしている。
ネタバレしながらストーリーを紹介すると、ベッセル氏という人物がいて、彼の自己催眠の結果、霊魂が身体を遊離してしまう。それは、まるで自分が拡大したかのような感じを与え、霊魂が身体の外に出て、身体にまとわりついた状態になっているかのようだった。その間、自分の身体は、他の霊魂に乗っ取られて、部屋を荒らし、家具を壊し、大声で叫びながらロンドンの街を走って、奇行の限りを尽くしている。この、別の霊魂というのは、異次元に数多くひしめいている存在で、この霊魂たちはいつでも他の人間の生命と身体を占領しようと狙っている。これらは、死者の霊ではなく、「この世で狂気に陥った人の理性的魂である」と考える医者もいる。
・・・なんだって?精神病患者の霊魂が空中に浮遊している?(笑)