昭和戦前期の雑誌『優生学』について

横山尊「昭和戦前期における優生学メディアの性格―雑誌『優生学』を対象に―」『生物学史研究』no.85(2011), 1-20.

 

昭和戦前期の雑誌『優生学』は私も少しリプリントを読んだが、色々な意味で不思議な雑誌である。まずは雑誌を刊行していた後藤龍吉の正体が分からないとのこと。私はしばらく前に、彼が編集者として書いているどこかの記述から「ああ医者なのか」と早合点して「医師」とこのブログに書いたことがあるが、横山先生のこの論文での記述を読んで(おそらく)間違いであろうと思う。訂正いたします。横山先生によると以下の通りである。

 

<医療の素養が多少はあるが、中学校を卒業したのみで、生物学などの専門教育は受けていない。父と弟を結核でなくした際、「社会病」の存在を認識し、環境の改善のみでは不可能と考え、先天的な遺伝形質に基づく優生学による改善を求めた。その優生学は、「真の科学と、本能と、信仰と渾一する、神の創造に参与して無限の進化に努力する、これら倫理的創造進化」という、明治後期から大正期にかけ盛んに読まれたヘッケルの一元論ベルクソン生の哲学を想起させる世界観に根付いていた。>